元映画館を発見した。

街を歩いていたら、日暮里金美館という看板を見つけた。
そこは、かつては映画館であったらしい。

1922年に創業した金美館は、20館あまりを有する東京の映画館チェーンであった。しかしその多くは第二次世界大戦下に焼失し、残ったものの多くも1940-50年代に相次いで閉館に追いやられた。

この「日暮里金美館」は、金美館の名を残していた最後の生き残りであったが、1991年10月にその幕を閉じた。そして、現在に至るまでの28年間、この元映画館は誰にも使われることはなかった。日暮里金美館という看板は今でも掲げ続けられているが、それが映画館の名前であったことを知る人は、もうあまりいない。

かつて映画館であったこの場所に足を踏み入れた瞬間、
「何かしたい」という発作が起きた。

この場所に新しい名前は似つかわしくない。
かつて映画館であった場所、しかしもう映画館ではない場所。
だからこの場所を「元映画館」と名付けた。

誰が使うのか、何に使うのか、何のための場所なのか。
日暮里金美館という看板がただ残されていたおかげで、
この元映画館に出会えたように、
他の誰かがこの「元映画館」を発見して起こった発作、
その偶然的な連鎖が起こり続ける限り、
ここは、何でも起こり得る「元映画館」であり続ける。

そして、この場所で起きる出来事を、かつて様々な映画を投影していた
「元映画館」の目(映写窓)から映像という形で記録し続けようと思う。